恵庭アグリ企画 - 平野 隆晴 & 吉田 俊二
その「おいしい」は、私が育てました(2) ~ 野菜生産者
消費者はいつも同じだと思っているけど、雨が降った翌日の野菜は、おいしくない。
最近の直売所ブームを どのようにお感じですか?
- 吉田
- 最近の消費者は賢くなった。僕らより、勉強してるんじゃないかな。
そう、ハネ品を買うの、上手になったね~(笑)。直売のおかげで、規格品と味が変わらないことを知ってしまったんだ(笑)。 - 平野
- 生産者は食味のいいものを栽培するようになるよね。たとえ作りづらい品種でも、うまい方を選ぶ。化学肥料や農薬もできるだけ使わないようにしようとか、そういう気持ちになる。
- 吉田
- 僕らはね、もう30年以上も前からずっと消費者に「なぜ、私たちは恵庭に住んでいるのに、恵庭の農産物が買えないんですか?」と言われ続けてきたんです。各部署に相談してみても、結局、何も変わらなかった。自分で販売もしてみたけど、個人では限界がある。それで、主生産物が違う農家が集まり、収穫体験や直売を始めたんです。
- 平野
- うちはミニトマトも作っているけど、収穫体験に来たお客さんに食べてもらうだけ。仲間の山内さんがトマトを作っているから、うちでは絶対に売らない。それでも、おいしい品種を選びますけど(笑)。
- 吉田
- 平野さんのところは、メロンの栽培に必要だから、ミニトマトを植えているの。
- 平野
- ミニトマトを植えることで、メロンにアブラムシがつかないんです。それだけ防除の回数が少なくてすむ。他にもあるんですよ。大豆の中にニンジンを植えるとか。
- 吉田
- あのね、玉ねぎは普通どのくらい消毒してると思いますか?
農薬をたくさん使う野菜だと聞きますが、3、4回ですか?
- 吉田
- (笑)
- 平野
- (笑)
- 吉田
- ケタが違う。通常は20~25回はかける。そのくらい消費者の感覚と生産者の現場は違う。消費者の中に「数10回」という感覚はないでしょ? 農薬ひとつ取っても違いがある。たくさんかけた方が楽なんですよ。作物を成長させるには。
- 平野
- 病気にならないし、腐らないし。でも、僕は農薬なんか使いたくないから、使わないためにはどうしたらいいか、一生懸命考える。たとえば、木酢を主体にしたリン酸系の有機質などを混ぜると農薬が少なくてすむ。効きがまったく違うんですよ。
- 吉田
- これが平野さんの得意分野。僕なんか、肥料のやり方や農薬のことは、彼によく相談します。消費者と直につながると、なんでも真剣勝負になる。あと、毎年、天候や気温は違うでしょ。ほ場も輪作するから同じじゃない。味が変わって当然のこと。消費者はいつも同じだと思っているけど、雨が降った翌日の野菜は、おいしくないんですよ。
- 平野
- ハウスで育てた野菜でも違いますよ。水を吸いすぎるから、糖度1、2度は変わります。トウモロコシでも、トマトでも、水っぽくなるんです。
- 吉田
- うちの常連さんなんかは、理解してくれてるけど。本当においしいものを食べたければ、送る時間は生産者に任せてもらった方がいいんです。
消費者や仲間に救われたことはありますか?
- 平野
- アグリ企画を立ち上げる前から、うちらは「田舎倶楽部」をやってきて。
- 吉田
- 1年間の契約で消費者が農作物の栽培を農家に頼むスタイル。その報酬を事前にいただくオーナー制で、いまも続いています。恵庭市まちづくり研究会も応援してくれました。
- 平野
- メロンの個人販売をしようとしたときに、そのときの仲間が、ものすごく協力してくれたんです。平均5個入りで800ケースはあったかな。
- 吉田
- いまならメロン4,000個売るなんてわけがないと思われるかも知れないけれど。当時、個人で売るなんてできない時代だったから、大変なこと!
- 平野
- チラシもみんなで作ってくれて。それを恵庭、北広島、島松、恵み野の駅で配ってくれたり、市民農園の各オーナーや町内会長に連絡をしてくれたり、46人くらい集めてくれたかな。そこからまた口コミで広がって。
- 吉田
- そのときの仲間とは、今でも全員とお付き合いがありますよ。
農業体験をして変化した子どもたちはいますか?
- 平野
- 宿泊体験をすると「帰りたくない」と泣く子もいるし、アスパラが嫌いな子もいたね。ジンギスカンに入れて、友だちが「おいしい、おいしい。おまえ、いいから食べてみろ」とすすめて、いやいや食べたら「え、アスパラってこんなにおいしいの?」と驚いて、買って帰ったんですよ。
- 吉田
- トマトが嫌いな子、ピーマンが嫌いな子、うちに来たら90%は好きにさせる自信はあります。食べさせたら、こっちのもの!(笑)。
- 平野
- 最近は農業体験をさせてほしいという人が多くなりましたね。
- 吉田
- ここ2、3年だよね。アグリ企画だけでも年間3,000人以上はいる。宿泊体験するのは25人くらいかな。やっぱり夏が多い。でも、春は種まき体験ができるんだよ。小学校、中学・高校の学習体験が圧倒的に多いけれど、一般の人が増えてきている。時代が求めているんだなあ。
プロフィール
恵庭アグリ企画 平野 隆晴
Takaharu Hirano
- 住所:
- 北海道恵庭市漁太452
- 電話番号:
- 0123-33-0530
7 ~ 8月はエルシーメロン、12 ~ 1月は軟白長ネギの収穫体験ができる(要事前連絡)。米は無肥料・除草剤1回で栽培。田舎倶楽部ではジャガイモを担当。
プロフィール
恵庭アグリ企画 吉田 俊二
Syunji Yoshida
- 住所:
- 北海道恵庭市穂栄25
- 電話番号:
- 0123-36-5456
アスパラ、スイートコーン、枝豆、ジャガイモなど、4 ~ 10月にかけて10 ~ 30種類もの収穫体験ができる。田舎倶楽部ではカボチャを担当。
(収穫体験は火・木・土・日・祝祭日。それ以外の曜日または、3人以上の場合は要事前連絡)