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酪農体験むらかみ牧場 - 村上 隆彦

その「おもしろい」は、私がつくりました ~ 酪農家

酪農体験むらかみ牧場

牛のオッパイは、なぜここにあるのか? まずは、子どもたちに考えさせる

恵庭を自慢できるなら、観光牧場でもいいじゃないか

酪農体験むらかみ牧場

 週末になると「タカトシ牧場はどこですか?」と訪ねてくる観光客が後を絶たない。開拓入植から120年もの歴史がある牧場の主、村上隆彦さんは「テレビの力には、かなわない」と苦笑する。真夜中に酪農体験の予約が入る。深夜2時、3時に、騒がしい車が入り込んでくる。その一つ一つに対応するのも、今は仕事だと思っている。

 乳牛130頭の世話から酪農体験の営業、テレビ出演まで入れたら、労働時間は普通の農家の倍になる。それでも、「自分のふるさとがテレビに出ていて、うれしい」「子どもに、この近くに住んでいたと自慢しているよ」など、知人や同級生から届いた声が励みになる。

 酪農体験を受け入れてから12年。エミューやポニー、やぎなどがいる"ふれあい動物広場"や"ジンギスカン小屋"、"モダンタイルアート"が置かれ、息子が「週末は、わが家ではない」と表現するほど、観光牧場としての賑わいを見せるようになった。

 最近、自分が恵庭に住んでいることをどれだけ幸せかを伝えるときに「自分たちと同じ空気を吸って、同じ水を飲んで育った野菜や食べ物が、いちばんおいしい」と話すようにしている。

毎日飲む牛乳と牧場の関係を地元の小学生も知らなかった!

酪農体験むらかみ牧場

 ある日、息子が通う小学校の先生から「牧場を見学させてほしい」と頼まれた。引き受けたものの、何をどう説明していいのかわからない。バスから降りた子どもたちは、まず「臭~い」と鼻をつまむことから始める。こちらも慣れていないから一生懸命に説明をしても、誰も聞いてくれない。ただ一つだけ、絶対に子どもたちを驚かせる切り札を用意していた。

 「みんなが毎日、給食で飲んでいるのは、どこの牛乳かな?」「森永牛乳」「そう、その牛乳は、おじさんの牧場で搾ったものなんだよ~」。ここで、子どもたちから尊敬のまなざしが集まるはずだった。ところが、ほとんどの子がキョトンとしている。期待通りのリアクションがない。子どもたちにとって、自分たちが飲む牛乳は工場で作られているもので、搾乳体験をした後でも、牧場の牛の乳と結びついていなかったのだ。

 ショックだった。地元の子どもたちでさえ、牧場がどんな働きをしているのかを知らないのだ。いままで自分は何をしてきたのか、言い知れぬ脱力感を味わう。伝えなければ、牧場の未来はない。酪農体験の受け入れを本格的にはじめたのは、それがきっかけだった。

いまのスタイルは、全部子どもたちから教わった

酪農体験むらかみ牧場

 酪農体験を受け入れてから、子どもたちから教わることが多い。酪農家にとって「搾りたての牛乳があたたかい」のは当たり前でも、冷蔵庫の冷たい牛乳しか知らない子が搾乳すると、それが驚きになる。最初は単純に「臭い」と言っていた子も、どんな匂いか追究させると、中には「しょうゆ」「みそ」と、嗅ぎ分ける子も出てくる。牛に与えているエサには、周辺の食品加工場から出る豆腐のおからを混ぜているから当然だ。そんな匂い一つだけでも、酪農を語るネタになる。

 最近の子は、すぐに答えをほしがる。でも、「どうしてだと思う?」と、まずは子どもたちに考えさせるのが村上流。なぜ、そこに行き着いたのか、そのプロセスが大事だと思うからだ。牛のオッパイは、なぜここにあるのか?なぜ4つあるのか?子どもたちから、おもしろい仮説を引き出すのが、楽しくてしかたがない。

 「いまの農業者は専門分野に特化して教わる。僕は米を作れないし、豚も飼えない。でも、昔の農家は何でもできたんだよね」。これからは異業種農家と手を結ぶことで、もっと、もっとおもしろいことができるんじゃないかと、なにやら企んでいるらしい。

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プロフィール

酪農体験むらかみ牧場 村上 隆彦

住所:
北海道恵庭市戸磯156
電話番号:
0123-32-5093

牛の乳搾りをはじめ、子牛への哺乳、新鮮な牛乳からバターやアイスクリームを作る体験メニューも充実。農家に宿泊し、実際の酪農作業を体験するファームステイも受け入れている。
○体験期間:4月 ~ 10月(要予約)
○体験時間:60 ~ 90分
(1)10:30 ~ (2)13:00 ~
○料金:小学生1,000円、中学生以上2,000円
※2人以上100人まで

http://www.murakami-farm.com

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