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有限会社 余湖農園 - 余湖 智

その「おいしい」は、私が育てました(3) ~ 野菜生産者

有限会社 余湖農園

うちの畑は多品目生産。連作障害も防ぎやすいので、土壌殺虫剤なんて必要ない。

有機栽培で作ってください それを直接届けてください

有限会社 余湖農園

 「有機栽培で野菜を作ってください。それを直接届けてください」 100人ほどの消費者グループから頼まれ、余湖農園の産直は始まった。まだ、有機栽培が一般に知られていない30年も前のことである。代表の余湖智さんは「米は穂別、野菜はうち。消費者と一緒に勉強会を開き、10数年続きましたかね。それが恵庭から、千歳、苫小牧、札幌と飛び火し、宅配が広まりました」と当時を振り返る。

 約600人の顧客を抱え、週に1度、札幌まで宅配に回った。「すごくおいしかった」「いつもありがとう。お茶でも飲んでいって」そんな喜びの声を直接聞けるのが嬉しくて、味覚の追求をするようになった。消費者はサイズが揃った"規格品"を求めていたわけではなかったのだ。

 しかし、生産の現場は厳しい。化学肥料や農薬に頼らずに野菜を作ることは、当時、同業者の間では"変わり者"として扱われた。「農家も高齢化が進むから、航空防除は必要だ」とする声に1人で反対し続け、市や農協、農業改良普及センターを説得するために何度も足を運んだ。

 いまや、化学肥料・農薬の使用が少ないクリーンな農産物の生産地として北海道をPRする時代になった。現在、「有機JAS」「YES! clean」「エコファーマー」など、安全・安心の目印に、道による農産物表示制度が設けられている。北海道の農家でも6割が、その認証作物を栽培している。

消費者の信頼を得るために 栽培方法をオープンにする

有限会社 余湖農園

 農林水産省により、「有機農産物」の表示ガイドラインが設けられ、その基準が明確になった。2年以上農薬や化学肥料を使用していないほ場で、原則、化学肥料・農薬を使用せず、遺伝子組み換え種苗を使用しないこと。第3者による認証が必要で、そのハードルは高い。50品目すべてを有機農産物にするのは、認証を得るコストが掛かるため、なかなか難しい。

 現在、余湖農園の作物の多くは、道が認めた化学肥料・農薬の基準使用量の半分以下で栽培した「特別栽培農産物」となる。余湖農園の強みは、多品目大量生産にある。毎年同じ畑に同じ作物を植えると病気になるため、科の違う作物を上手く組み合わせて連作障害を防ぐことができる。「うちの場合は、科で分類しても10種類ほどあるので、それが容易い。土壌殺虫剤を使う必要は全くありません」と胸を張る。

 食品工場から出た食品残さを農場の野菜くずとブレンドした独自の堆肥を使用することで、環境に配慮した循環農業にも取り組んでいる。

冬の日照を利用すれば、零下5度でも野菜は育つ

有限会社 余湖農園

 いま、余湖さんは厳冬期でもほとんど燃料を使わずに野菜を栽培する方法に挑戦中だ。恵庭の冬の日照率の高さを利用して蓄熱し、外気が零下25度になっても、ハウス内を零下5度に保つことができれば成功だ。「零下5度で、野菜が育つんですか?」「大丈夫。最初から厳しい条件で発芽させると、植物の中にその記憶が残り、しばれた状態になっても、最初の記憶を頼りに成長を始めるんだよ。不思議でしょ」

 余湖さんに何を質問しても、明確な答えが返ってくるので、まるで研究者から講義を受けているようだ。目を丸くするような話だが、地下水を利用して育てられた、目の前のセリ、ブーケレタス、クレソンの初々しい緑たちは、冬も食卓を飾ることができるのだ。

 日が暮れるころ、「春菊25箱追加!」の声にパートさんたちが慌てて畑に出動する。売り場の売れ行きに合わせて出荷する夕方が勝負らしい。同行して春菊の葉を口にして驚いた。えぐみが全くない。甘ささえ感じる。手が止まらない。「おいしいでしょ。茎までやわらかいの、ほら、持っていきなさい」なるほど、なるほど、直売所ブームの中で「余湖農園」がブランド化されているのも納得だ。

プロフィール

有限会社 余湖農園 余湖 智

Satoru Yogo
住所:
北海道恵庭市穂栄323
電話番号:
0123-37-2774

約30年前より、特別栽培(減化学肥料・減化学農薬)野菜を生産。野菜や加工品の流通、農業・加工体験などの消費者との交流も行っている。経営面積は56.6ヘクタール、生産品目は約50品目。

○野菜の収穫体験(6~9月) / 農産加工体験(豆腐づくり・そば打ち) ※いずれも要予約

○2011年春、直売所をオープン!
http://www8.ocn.ne.jp/~global

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